AI時代を生き抜く私たちの心を満たす五感の共有とIKIGAIの育み方

デジタル社会を生き抜く私たちの心を満たす五感の共有とIKIGAIの育み方

時代の転換点で見つめ直すアナログな絆と命の時間のつながり

社会的な責任を全うし、仕事や家庭において一定の到達点に立った方々が、ふとした瞬間に「これからの日常をどのように彩っていくべきか」と立ち止まることは、人間の心の成熟に伴う極めて自然な変化です。

 

長年の経験を通じて多くの知識や技術を手に入れ、経済的な基盤を築き上げたからこそ、これからの時間を誰のために、何のために使うべきかと思慮を深めるのは、心の内側にある豊かな感受性が新たな目的を探し求めている証拠と言えます。

 

これからの人生の時間を、愛する家族や大切な人たちとどのように分かち合い、どのような価値を社会へ還元していくのか。

この深い思索に応える概念として、日本発祥の「生きがい」という言葉が、世界中の有識者や環境保護に取り組む人々から熱烈な注目を集めています。

 

AIなどのテクノロジーが急速に発展し、あらゆる情報が瞬時に手に入る現代において、私たちは利便性を手に入れた一方で、直接的な触れ合いや自然の移ろいを感じる機会を失いつつあります。

 

当財団の代表である石尾美海は、AI時代だからこそ、家族の絆や大切な人との時間が、人生の中でより大切になっていくと語っています。

スマートフォンなどの画面から目を離し、相手の言葉に笑顔で耳を傾けるというアナログな関わりこそが、人間本来の心の充足をもたらすのです。

 

IKIGAIとは、単なる個人の楽しみや表面的な成功を示す言葉ではありません。

 

自分自身の存在が、大切な人との絆や地球という巨大な生態系と深く結びついており、日々のささやかな行動が未来の命を支えていると実感できる状態を指す、極めて実践的な概念です。

 

アメリカのスタンフォード大学が実施したテクノロジーと人間の幸福度に関する研究において、デジタルデバイスを介さない直接的な対面コミュニケーションが、脳内のオキシトシン分泌を促し、孤独感を著しく低下させることが実証されています。

 

人間の身体は本来、他者の表情や声のトーン、周囲の自然の空気といった五感を通じた情報と直接的に呼応する仕組みを持っており、人間もまた世界という巨大なネットワークの一部として機能していることが明確に示されています。

 

これからの時代においてIKIGAIを見出す道程とは、自分自身を自然の一部として捉え直し、未来の生命のために何ができるのかを新しく見つめていく温かい旅です。

 

愛する人とのかけがえのない時間を心ゆくまで楽しみながら、世界に対して自分ができる最善の貢献を果たしていく。

その優しい重なり合いを見つけることが、人生の時間をより輝かしいものへと変化させます。

 

海と生命の不可分な関係を見つめ続けた海洋学者の視座

“No water, no life. No blue, no green.”

(水がなければ、命はない。青がなければ、緑もない。)

 

こう語るのは、アメリカの海洋学者であり、ナショナルジオグラフィック協会初の女性専属探検家としても知られるSylvia Earle(シルビア・アール)氏で、数千時間にも及ぶ潜水探査を通じて、深海という未知の世界の美しさと脆弱性を世界中に伝えてきた人物です。

 

彼女は、地球表面の大部分を覆う海が、単なる水の塊ではなく、地球全体の気候を安定させ、陸上のすべての命を支える巨大な生命維持装置であることを、豊富な科学的データとともに訴え続けてきました。

 

彼女が海洋保護区を拡大する「ミッション・ブルー」という活動を立ち上げ、高齢になってもなお精力的に潜水と発信を続けた背景には、彼女自身が海中で数え切れないほどの美しい生命と出会い、彼らが人間の活動によって直面している危機を誰よりも身近に感じていたからだと推察されます。

 

彼女自身、海の環境がかつての豊かさを失っていく過程を目の当たりにしながらも、決して絶望することなく行動を続けています。

そのような状況下にあっても、彼女の精神が決して折れることがなかったのは、海という生命の源そのものが、彼女の魂に無限の活力を注ぎ込んでいたからではないでしょうか。

 

彼女の言葉は、私たちが日々の生活の中で環境問題の大きさに圧倒されそうになったとき、海と陸が完全に繋がっており、私たちの小さな行動が地球全体の青色を守ることに直結しているという事実を教えてくれます。

 

地球上の生命が持つ驚異的な回復力と美しさに触れることは、彼女にとって単なる科学的な興味を超え、自らの命を燃やしてでも未来の子供たちへ美しい世界を残そうとする、何にも代えがたいIKIGAIであったと考えられます。

 

効率化の影で海へ流れ込むプラスチックごみと失われた自然との関わり

現代社会が抱える利便性の代償と環境への影響

 

現代社会においてIKIGAIというテーマがこれほどまでに議論の的となっているのは、私たちのライフスタイルが、目に見えない生命の循環から決定的に切り離されてしまったことに根本的な原因があります。

 

私たちはこれまで、目に見える経済的な利益や、即座に結果が出る効率性を最優先に追い求めてきました。

しかしその結果として、私たちが口にする食べ物を育む自然環境や、地球の基盤となる生態系との直接的な関わりを喪失しつつあります。

 

毎日が同じことの繰り返しだと感じる心の隙間は、まさにこの自分よりもはるかに大きな生命のネットワークとのつながりが断たれていることから生じる違和感なのです。

目先のタスクをこなすだけでは満たされない、持続可能で本質的な幸福への欲求が、私たちの内側で悲鳴を上げています。

 

この違和感の背景には、地球環境問題という人類共通の極めて深刻な現実が存在しています。

経済協力開発機構(OECD)が2022年に報告したデータによれば、2019年の世界のプラスチックごみの発生量は3億5,300万トンにのぼります。

そして、そのうち2,200万トンが適切な処理をされずに環境中に流出したと推計されています。

 

さらに、1950年代以降に海に流出したプラスチックごみの総量は、1億3,900万トンに達すると推計されています。

5mm未満のマイクロプラスチックは海中だけでなく環境中に広がり、人間や生物への影響が懸念されています。

 

私たちの日常生活を便利にしてきた素材が、適切な循環システムを持たないまま自然界へ放出されることで、何百年にもわたって生態系を脅かし続けるという問題は、単なる環境保護の枠を超え、私たちのライフスタイルそのものの在り方を問うています。

 

また、心理学の研究において、自然環境の破壊が進む状況を認知することが、人間の精神に慢性的な不安をもたらすことが実証されています。

 

アメリカ心理学会(APA)が発表したエコアンザイエティ(環境不安)に関する報告では、気候変動や海洋汚染といった地球規模の危機に対して自分が何も行動できていないという無力感が、現代人の幸福度を著しく低下させる要因の一つであることが明らかになっています。

 

つまり、海の生態系を保護するための小さな選択を日常に取り入れるという行動は、単なる環境保護活動ではありません。

地球の基盤を回復させると同時に、行動する主体である人間自身の心を深い根底から癒やし、生命の循環に直接関わっているという確かなIKIGAIをもたらす、極めて本質的なアプローチなのです。

 

水と命の循環を潜水探査で明らかにした冒険家の言葉

 

“We forget that the water cycle and the life cycle are one.”

(私たちは、水の循環と命の循環がひとつであることを忘れてしまっている。)

 

フランスの海洋探検家であり、スキューバダイビングの器材であるアクアラングの共同開発者としても知られるJacques-Yves Cousteau(ジャック=イヴ・クストー)氏は、調査船カリプソ号で世界中の海を巡り、数々のドキュメンタリー映像を通じて海の神秘を大衆に届けた人物です。

 

彼が海の世界へ潜り始めた当初、海は広大で無限の資源を持つ場所であり、人間がどれほどごみを捨てても浄化されるという認識が一般的でした。

しかし、数十年間にわたって同じ海域を観察し続けた彼は、かつて色鮮やかだったサンゴ礁が死滅し、透明だった海中が人間の作り出した廃棄物で汚染されていく様子を克明に記録しました。

 

彼が環境保護の重要性を世界に向けて発信し始めた背景には、彼自身が海という美しい世界に魅了され、その世界が人間の無自覚な行動によって急速に失われていくことへの深い悲しみがあったからだと推察されます。

 

潜水という行為を通じて直接的に海と触れ合うことは、彼にとって生命の起源と繋がる神聖な体験でした。

自然を単なる資源のゴミ捨て場として扱うのではなく、私たち自身の命を巡る血流と同じように尊ぶこと。

 

そのような長年にわたる地道な海洋探査と啓発活動は、彼にとって決して義務や自己犠牲などではなく、自然という巨大な生命の織物に自らを編み込んでいくための、喜びに満ちたIKIGAIだったのではないでしょうか。

 

私たちが自分自身の人生の意義を問い直すとき、彼の言葉は、私たちを取り巻くすべての命に対してどのような責任と愛情を持てるのかという、極めて美しい問いを投げかけてくれます。

大きな使命を探す手を止め日常の五感から取り戻すIKIGAIの実践

アナログな時間の中で培われる相手を想う力の波及

 

「生きがい」を見つけるためには、まず初めに特別な才能や、他者から称賛されるような目立つ実績が必要であると考える人が多くいます。

しかし、これからの時代のIKIGAIの形は、そのような個人の能力の証明という従来の誤解から離れ、もっと有機的で、互いに支え合うネットワークの中に存在しています。

 

ここで、ひとつの明確な基準を提示します。それは、「あなたがこれまでに培ってきた経験や愛情を、目の前の大切な人との五感を通じたコミュニケーションの中でどのように分かち合っていくか」ということです。

 

この命の時間の使い方という概念を深く理解するために、デジタル社会における人間の認知機能に関する科学的な事実を参照することが非常に有効です。

 

行動経済学や認知心理学の分野において、人間は無意識のうちに一日何千回もスマートフォンの画面に視線を奪われ、目の前の現実空間に存在する微細な情報を見落としていることが明らかになっています。

 

カリフォルニア大学アーバイン校の研究チームによる実験では、会話中にデジタルデバイスが視界に入るだけで、対話の質が低下し、相手への共感能力が有意に下がることが実証されました。

デバイスを置いて相手の目を見て話すという行為は、脳内のミラーニューロンを活性化させ、深い結びつきを生み出す極めて高度な社会行動なのです。

 

石尾は、幸せな時間にもいつか終わりが来るからこそ、今という一瞬を大切に生きる価値があると思いを巡らせています。

 

夫の言葉にはスマートフォンを置いて笑顔で耳を傾けること、そして「ありがとう」を言葉にしてしっかりと伝えること。

このような日常の極めてアナログな関わりこそが、人間としての深い愛情を育むのです。

さらに石尾は、家族単位の小さな愛が社会を変える大きな力になり、時間を超えて次の世代へ引き継がれていくと考えています。

 

この記事にたどり着いてくださった読者の皆様も、これまでの人生で多くの風雪に耐え、豊かな経験と知識を蓄えてきた存在なのではないでしょうか。

 

あなたが持つその豊かな愛情を、遠くの壮大な目標に向ける前に、まずは目の前の大切な人へと五感を通じて注ぎ込んでいくこと。

見返りを求めることなく、自らの経験や愛情を手渡していくという行為そのものが、あなたの心をかつてないほどの深い充足感で満たしてくれるはずです。

 

自然界の脅威を映像で伝え続けた動物学者が語る小さな行動の力

 

“Right now, eight million tonnes of plastics end up in the oceans every year… the actions of just one of us may seem to be trivial and to have no effect. But the knowledge that there are thousands of, hundreds of thousands of people who are doing the same thing – that really does have an effect.”

(今この瞬間にも、毎年800万トンものプラスチックが海に流れ込んでいます。私たち一人ひとりの行動は取るに足らず、何の影響もないように見えるかもしれません。しかし、同じことをしている何千、何十万という人々がいるという知識は、確実に大きな影響力を持っているのです。)

 

イギリスの動物学者であり、数々の自然ドキュメンタリー番組の制作と語り手を務めてきたDavid Attenborough(デイビッド・アッテンボロー)氏は、半世紀以上にわたって地球上のあらゆる秘境に足を運び、野生動物の生態を記録し続けてきた人物として広く知られています。

 

彼が放送を通じて自然界の驚異を伝え始めた当初、地球の自然は無限に回復可能であると信じられていました。

しかし、彼自身の長年の取材活動の中で、氷河が崩れ落ち、海鳥の胃から大量のプラスチックごみが出てくるという現実を直視せざるを得ませんでした。

 

それでも彼が屈することなく、90歳を超えてなお世界中の首脳や若者たちに向けて環境保護の重要性を直接訴え続けている背景には、彼自身が地球という惑星の美しさに深い畏敬の念を抱き、それを破壊するのも守るのも人間の選択次第であるという真実を肌で感じているからだと推察されます。

 

一個人の小さなエコバッグの使用や、使い捨て製品を避けるといった行動が、世界規模のネットワークを通じて巨大な変化のうねりとなることを、彼は確信しているのではないでしょうか。

 

競争ではなく、協力こそが生命を繁栄させる最大の鍵であるという彼のメッセージは、現代の私たちの常識を根本から覆す歴史的な成果となりました。

 

目に見えないつながりに光を当て、私たちのアナログな生活習慣が遠くの海の命を守る力になることを伝えることは、彼自身にとって、世界との深いつながりを感じる何にも代えがたいIKIGAIであったと考えられます。

 

私たちが他者とどう関わり、社会という環境の中でどのように生きていくべきかを考えるとき、彼の言葉は、孤立を手放し、他者と温かくつながり合うことの大切さを力強く教えてくれます。

 

愛する人との時間から広がる海洋保護活動への参加と波及効果

家族の原体験から立ち上がる社会課題への取り組み

 

日々の生活の中でIKIGAIを見出し、それを実際の行動へと結びつけていく過程は、必ずしも孤独な道のりではありません。

社会貢献と愛する家族との大切な時間を両立させる生き方は、これからの時代において、私たちの人生をより価値あるものへと導く道しるべとなります。

 

当財団は、自然や生き物を愛する財団として、海の命と生態系を守るための支援を行っています。

 

この海洋生物保護への想いは、一つの個人的な体験から深く根付いています。

石尾の娘が小学生の頃、カナダのバンクーバーで海洋生物の保護活動について学ぶ機会を得たことが大きな転機となりました。

「海の生き物たちが安心して泳げる海を守りたい」という幼い頃の純粋な願いが、活動の強力な原動力となっています。

財団では現在、海洋生態系の保護・調査研究の支援や、プラスチックごみ削減に向けた啓発活動、未来を担う子供たちへの海洋環境教育の提供などを行っています。

 

このように、純粋な利他的行動が個人の寿命や健康状態にどのような影響をもたらすかについて、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の研究チームが実施した長期的な追跡調査において、極めて興味深いデータが報告されています。

 

この調査では、自己の利益や精神的満足感を得るためではなく、純粋に地域社会や環境保護に貢献したいという思いやりに基づく利他的な動機からボランティア活動や寄付に参加している人々は、そうでない人々と比較して、ストレスマーカーであるコルチゾールの値が低く保たれ、血圧の安定や認知機能の維持に顕著な効果が見られることが判明しています。

 

他者への貢献や未来の世代を思いやる行動は、脳内のストレスホルモンを減少させ、オキシトシンなどの絆ホルモンの分泌を促すことで、人間の心身を根底から健康にする機能を持っていることが実証されています。

 

家族の原体験を大切に守り、そこから得た気づきを社会へ還元していくプロセス。

私たちがプラスチックごみを減らすために行動を起こし、その美しい海を愛する子供たちと共に分かち合うとき、社会への貢献という外側への働きかけと、家族との時間という内側への愛情が見事に重なり合います。

 

その温かい連鎖を築き上げることこそが、私たちの人生に最も強固で美しいIKIGAIをもたらす確かな道のりとなるのです。

 

自然環境を事業の基盤と捉え抜いた経営者が示す真の責任

 

“Fundamentally, businesses are responsible to their resource base. Without a healthy environment, there are no shareholders, no employees, no customers, and no business.”

(根本的に、ビジネスは自らの資源基盤に対して責任を負っています。健全な環境がなければ、株主も、従業員も、顧客も、そしてビジネス自体も存在し得ないのです。)

 

アメリカのアウトドアブランド・パタゴニアの創業者であるYvon Chouinard(イヴォン・シュイナード)氏は、自らの利益を追求するだけでなく、環境保護を企業の最大の目的として掲げ、最終的には自らの会社の全株式を環境保護の信託財産として譲渡した人物であることが広く知られています。

 

彼がビジネスを始めた当初、ロッククライミングの道具を製造していましたが、自らが作った鉄製のピトン(岩に打ち込む道具)が美しい岩肌を傷つけていることに気づき、利益の柱であったその製品の製造を即座に中止しました。

 

彼が利益よりも自然環境を優先するという決断を下し続けた背景には、幼い頃から自然の中で多くの時間を過ごし、野生の動植物と共生することの喜びを誰よりも深く信じていたからだと推察されます。

 

彼にとってビジネスを営むことは、単なる富の蓄積ではなく、自分が愛する自然を守り、修復するための最も強力な手段でした。

 

自らの身の危険を顧みず崖を登り、自然の脅威と美しさを同時に味わい続けた日々は、彼自身の魂を強烈に突き動かし、世界を変えるという揺るぎないIKIGAIであったのではないでしょうか。

 

私たちが自分自身の仕事や生活の在り方に迷いそうになるとき、彼の言葉は、私たちが日々行っている消費やビジネスの選択が、未来の地球環境へと確実につながっていることを、私たちに力強く約束してくれます。

 

小さな選択を過小評価する心理と社会貢献に対する思い込みの解消

日常の積み重ねから生み出される確かな変化の実感

 

IKIGAIを見つけようと意識したとき、多くの人が陥りやすい傾向があります。

それは、「残りの人生をかけて取り組むべき、世界を救うような壮大な使命をすぐに見つけ出さなければならない」と、自らに対するハードルを過剰に高く設定してしまうことです。

 

仕事の第一線を退いた後、すぐに大規模な支援団体を立ち上げなければならないのか、あるいは全ての時間を社会課題の解決に捧げなければ生きがいとは呼べないのかと思い悩み、結果として何も行動を起こせなくなってしまうケースが多々見受けられます。

 

しかし、石尾はこれからの時代に人々が幸せに生きるためには、「成長×貢献×大切な人との時間」という3つの要素が不可欠であると説いています。

大切な人との時間を確保するためには、自分の時間をリスペクトし、時間の使い方に妥協しないことが必要です。

 

アメリカのペンシルベニア大学の心理学研究チームが実施したウェルビーイングに関する実験において、人間は巨大な目標を達成した瞬間よりも、日々のささやかな利他的行動を継続的に行った場合のほうが、生活に対する満足度や自己肯定感が長期的に高く維持されることが実証されています。

 

未来の命のために行動するということは、必ずしも国際的な会議で演説をしたり、莫大な資金を投じたりすることだけを意味するわけではありません。

 

大切な人とともに夕食をとりながら、その日の出来事を五感を使って共有し合うこと。

買い物の際に、海へ流れ込む可能性のある使い捨てプラスチック製品を一つだけ別のものに変えてみること。

あるいは、あなたがこれまでに培ってきた知識を、若い世代の相談に乗る形で少しだけ分かりやすく伝えてあげること。

 

これらはすべて、社会というネットワークに豊かな栄養を注ぎ込み、確実に未来の命を支える極めて価値のある貢献と言えます。

 

最初から完璧な計画を立てて大きな結果を出そうとするのではなく、まずは自らの生活圏内にある身近な環境に目を向け、大切な人との時間を慈しむこと。

 

そのような肩の力を抜いた柔らかな試行錯誤の過程こそが、あなた自身の心に水を与え、やがて強固でしなやかなIKIGAIへと成長していく確かなプロセスとなるのだと考えられます。

 

野生との共生を詩で表現し続けた文学者が説く地球との関わり

 

“Nature is not a place to visit. It is home.”

(自然は訪れる場所ではない。それは帰るべき家である。)

 

アメリカの詩人であり、環境保護活動家、そして禅の修行者としても知られるGary Snyder(ゲーリー・スナイダー)氏は、深い森の中での生活や先住民の知恵から学び、人間もまた自然という巨大な共同体の一部であるというメッセージを文学を通じて発信し続けた人物であることが広く知られています。

 

彼は現代の都市生活が人間から奪ってしまった「野生」の感覚を取り戻すことの重要性を説き、ピューリッツァー賞を受賞するなど高く評価されました。

 

彼が山にこもり、自らの手で家を建て、木々や動物たちと直接的な関わりを持ち続けた背景には、人間が自然を支配するという近代的な思想への強い危機感と、土に触れることの圧倒的な喜びがあったのだと推察されます。

 

この言葉は、人間がテクノロジーによっていかに便利さを享受しようとも、私たちの身体や心は進化の過程で自然環境とともに形作られてきたものであり、自然とのつながりを取り戻すことなしに真の幸福は得られないという確固たる理論に基づいています。

 

彼が地球上の生物多様性の保全を世界中の人々に強く訴え続けた背景には、自然が破壊されることは、単なる環境問題にとどまらず、人間の精神を豊かにするための貴重な財産が永遠に失われてしまうことだという深い認識があったのではないでしょうか。

 

自然界の奥深さを理解し、それを人々に伝え続けることは、彼にとって自らの命を最大限に輝かせるIKIGAIであったと考えられます。

 

私たちが都会の生活の中で心の乾きを感じるとき、彼の言葉は、五感を通じて自然と触れ合うことの中にこそ、私たちの精神を根本から癒やし、満たしてくれる鍵が隠されていることを優しく教えてくれます。

 

あなたの選択が未来の命を守る地球という帰る場所でのIKIGAI

日常の温かな連鎖から見出す生命の意義

 

「生きがい」を見つける方法とは、自分探しの旅に出てどこか遠くにある正解を探し当てることではありません。

それは、あなたがこれまで歩んできた豊かな経験という土壌の上に立ち、大切な家族や、これから未来を生きる子供たちへと、自らが持つ愛情や知識を惜しみなく手渡していく美しく温かい循環のプロセスです。

 

今回の内容でお伝えしてきた視点は、以下のようになります。

一つ目は、画面越しの情報ではなく、目の前の大切な人と五感を通じたアナログな対話を重ねることが、人間の心を深く癒やし、生活の充実感をもたらすということ。

 

二つ目は、利便性の裏側に潜む海洋プラスチックなどの問題から目を背けず、日々の生活の中で地球環境を守るための小さな選択を積み重ねていく姿勢が、社会への確かな貢献となるということ。

 

そして三つ目は、自らの身近な生活圏にある自然や家族との時間を最優先にすることが、結果として大きな社会課題の解決にも波及し、あなた自身の心に揺るぎない充足感を与えるということです。

 

休日の夕暮れ時、スマートフォンを部屋の片隅に置き、間接照明だけを灯したリビングのソファで、大切な人と温かいお茶を飲みながら、最近見つけた小さな自然の変化について語り合ってみてください。

あるいは、次に出かける休日の計画に、少しだけ海辺の清掃活動に参加してみる時間を組み込んでみるのも良いかもしれません。

 

これまでの自分のキャリアや成果に対して、どこか物足りなさや焦燥感を感じる時は、五感を使って直接触れられるものの温度や手触りにただ寄り添うことで、自らの内側に眠る本当に守りたいものの輪郭がはっきりと浮かび上がってきます。

 

そのような大きなつながりの中で自分自身の呼吸を整える時間が、あなたの中にあるIKIGAIの種を確実に芽吹かせる大切なプロセスとなります。

 

宇宙の視点から青い惑星の尊さを訴え続けた天文学者の願い

 

“To me, it underscores our responsibility to deal more kindly with one another, and to preserve and cherish the pale blue dot, the only home we’ve ever known.”

(私にとってそれは、互いにもっと思いやりの心を持ち、私たちが知る唯一の家であるこの『淡く青い点』を保存し、大切にしなければならないという責任を強調しているのです。)

 

アメリカの天文学者であり、宇宙探査計画に多大な貢献をしたCarl Sagan(カール・セーガン)氏は、探査機ボイジャー1号が太陽系の果てから撮影した地球の写真「ペイル・ブルー・ドット(淡く青い点)」を見て、この言葉を残した人物であることが広く知られています。

 

広大な暗闇の宇宙の中で、地球がどれほど小さく脆弱な存在であるかを示したその写真は、人間の持つ傲慢さや争いの虚しさを鮮烈に浮き彫りにしました。

 

彼がこのたった一つの青い点を守る重要性を説いたのは、宇宙の途方もない広さを知る科学者だからこそ、地球上の生命の連鎖がいかに奇跡的で貴重なものであるかを誰よりも深く理解していたからだと推察されます。

 

一見すると絶望的に思える環境問題や社会課題に対しても、私たち一人ひとりの小さな行動の変化が集まれば、この青い惑星を確実に良い方向へ守ることができるという彼の深い確信。

それは、長年宇宙の謎に挑み続け、生命の驚異的な力を目の当たりにしてきた彼にとって、未来への希望を紡ぎ続けるための強固なIKIGAIであったのではないでしょうか。

 

私たちが自分の行動の意味に迷うとき、彼の言葉は、どのような小さな一歩であっても、それが未来の地球にとって確かな価値を持っていることを教えてくれます。

 

「What will you leave on this planet?(あなたはこの地球に何を残しますか?)」

 

この本質的な問いへの答えは、あなたがこれから愛する家族と紡いでいく五感に満ちた温かい時間と、未来の海洋や生命のために差し出すささやかな選択の中に、すでに見出されています。

【執筆・監修:ウィングストン調査研究部】

 

当財団では、世界中の人々が一度きりの人生を大切な人とともに歩み、

自分らしく輝き続けられる社会の実現を目指しております。

その一環として、日本発の概念である「いきがい(IKIGAI)」に注目し、多角的な研究を行っています。

「海外から見たIKIGAIの受容」や「生涯現役で活躍する高齢女性のライフスタイル分析」など、

共有可能な知見を多数蓄積しております。フォーラムへの登壇、カンファレンスでの発表、

メディア掲載のご依頼につきましては、下記担当までお気軽にお問い合わせください。

一般財団法人ウィングストン・ジャパン財団

 

担当:田中

 

【参考情報、引用元】

 

  • Stanford Medicine(Connectedness & Health: The Science of Social Connection)
  • National Geographic(Sylvia Earle – Explorer at Large)
  • OECD(Global Plastics Outlook: Economic Drivers, Environmental Impacts and Policy Options)
  • American Psychological Association(Mental Health and Our Changing Climate: Impacts, Implications, and Guidance)
  • The Cousteau Society(Jacques-Yves Cousteau: Ocean Explorer)
  • Journal of Social and Personal Relationships(The iPhone Effect: The Quality of In-Person Social Interactions in the Presence of Mobile Devices)
  • World Economic Forum(David Attenborough: The plastic problem is a global catastrophe)
  • Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health(Volunteering and Health for Aging Adults)
  • Patagonia(Patagonia’s Next Chapter: Earth is Now Our Only Shareholder)
  • University of Pennsylvania Positive Psychology Center(Altruism and Well-being)
  • Poetry Foundation(Gary Snyder: Biography and Poems)
  • The Planetary Society(Pale Blue Dot)

 

【名言の英語原文と日本語の直訳】

Sylvia Earle氏

“No water, no life. No blue, no green.”

(水がなければ、命はない。青がなければ、緑もない。)

 

Jacques-Yves Cousteau氏

“We forget that the water cycle and the life cycle are one.”

(私たちは、水の循環と命の循環がひとつであることを忘れてしまっている。)

 

David Attenborough氏

“Right now, eight million tonnes of plastics end up in the oceans every year… the actions of just one of us may seem to be trivial and to have no effect. But the knowledge that there are thousands of, hundreds of thousands of people who are doing the same thing – that really does have an effect.”

(今この瞬間にも、毎年800万トンものプラスチックが海に流れ込んでいます。私たち一人ひとりの行動は取るに足らず、何の影響もないように見えるかもしれません。しかし、同じことをしている何千、何十万という人々がいるという知識は、確実に大きな影響力を持っているのです。)

 

Yvon Chouinard氏

“Fundamentally, businesses are responsible to their resource base. Without a healthy environment, there are no shareholders, no employees, no customers, and no business.”

(根本的に、ビジネスは自らの資源基盤に対して責任を負っています。健全な環境がなければ、株主も、従業員も、顧客も、そしてビジネス自体も存在し得ないのです。)

 

Gary Snyder氏

“Nature is not a place to visit. It is home.”

(自然は訪れる場所ではない。それは帰るべき家である。)

 

Carl Sagan氏

“To me, it underscores our responsibility to deal more kindly with one another, and to preserve and cherish the pale blue dot, the only home we’ve ever known.”

(私にとってそれは、互いにもっと思いやりの心を持ち、私たちが知る唯一の家であるこの『淡く青い点』を保存し、大切にしなければならないという責任を強調しているのです。)

 

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