孤独社会におけるIKIGAIの現在地と新たな視点
長年にわたり多大な責任を背負い、事業やご家族の歩みを力強く牽引してこられた皆様は、すでに社会において確固たる基盤を築き上げ、多くの成果を手にされていることでしょう。生活の環境は整い、これまでのご自身の選択が正しかったことは、積み上げられた数々の実績が何よりも雄弁に物語っています。物質的にも社会的にも満たされた状態にあるからこそ、ふとした瞬間に、言葉にはしがたい問いが胸をよぎることはないでしょうか。
これまでの日々を全力で駆け抜け、 一つの目標に到達したからこそ見える景色の中で、「これからの人生の時間をより価値のあるものにしたい」「大切な人と共に、より有意義な時間を過ごしたい」という思いが芽生えているはずです。それは、決して現状に対する不満ではなく、知性と感性を極限まで研ぎ澄ませてこられた方だからこそ抱く、極めて深遠で尊い渇望に他なりません。
現代の社会において、「IKIGAI」や「生きがい」という言葉は、個人の内面深くを探求し、自分だけの情熱や目的を1人で見つけ出すものとして語られがちです。しかし、私たちの社会の現状を示す客観的な事実によれば、その「1人で完結する生きがい」には限界が近づいていることが示されています。
近年に公表された3つの重要なニュースが、その実態を鮮明に物語っています。
1つ目は、2025年5月19日にソニー生命保険株式会社が公表した「生きがい実態調査」です。10代から70代までの男女1400人を対象としたこの調査において、全体の約9割もの人が「生きがい」を大切だと思っているにもかかわらず、実際に「生きがいがある」と回答した人は約6割にとどまるという実態が浮き彫りになりました。また、生きがいが「ある」と答えた人の幸福度の自己評価は10点満点中7.1点であったのに対し、「ない・わからない」と答えた人は5.4点となり、生きがいの有無が日々の幸福感に直結していることが示されました。多くの人が生きがいを求めているものの、見つけられずに立ち止まっている現状があります。
2つ目は、2025年9月25日に日本の内閣府が公表した「満足度・生活の質に関する調査報告書 2025 ~我が国の Well-being の動向~」です。この報告書では、生活満足度の点数分布において全体の約66パーセントが10点満点中5点から8点に集中していることが明らかになりました。年齢階層別や雇用形態別の生活満足度の推移が詳細に示され、人々の心身の良好な状態が、社会との関わりや日々の生活環境の変化にいかに影響を受けているかが詳細に分析されています。
3つ目は、2025年12月10日に認定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえが公表した「こども食堂の実態・困りごと調査 2025 報告書」です。この調査において、こども食堂を運営する目的として「食事提供」に加えて「居場所づくり」を挙げた回答が8割を超えました。さらに「地域づくり・まちづくり」や「多世代交流」もそれぞれ6割を超え、単なる物理的な支援を超えて、他者との繋がりを生み出す場が社会から強く求められていることが確認されました。
これらのニュースが示すのは、個人の幸福感や満足度が、単なる自己完結型の欲求ではなく、他者との関わりや社会的な居場所の存在に強く依存しているという事実です。
イギリスの著名な詩人であるジョン・ダン氏は、かつて「何人も一島嶼にてはあらず(いかなる人間も、孤立した島のような存在ではない)」という言葉を残しました。人間は決して孤立した存在ではなく、他者との繋がりの中でこそ、その存在意義を見出す生き物なのです。
本記事では、孤独化が進む現代社会において、IKIGAIを「一人で見つけ出すもの」から「他者との関係性のなかで育つもの」へと再定義します。この記事を最後までお読みいただくことで、皆様の心の中にある漠然とした問いが晴れ、大切な他者やコミュニティとの関わりを通じて、これからの人生をより豊かで意味のあるものにするための具体的な視点と行動のきっかけを得ることができるはずです。
「1人で完結する生きがい」という幻想からの脱却
「IKIGAI」あるいは「いきがい」という言葉の本来の定義を紐解くと、それは決して壮大な目標の達成や、自己の能力を極限まで高めて他者を圧倒することではありません。日本古来の思想において、生きがいとは日々の小さな営みや、他者との調和の中に存在するものでした。
しかし、現代社会では、「自分自身の内側に隠された究極の目的を見つけ出さなければならない」という強い思い込みが蔓延しています。多くの情報が、個人の情熱や才能を最大限に発揮することこそがIKIGAIの正体であると説き、自分探しの旅へと人々を駆り立てます。この「自己完結型のIKIGAI」は、最初のうちは強い動機付けとなりますが、やがて大きな限界に直面します。どれほど自己分析を重ねても、他者からの反響や社会的な繋がりが欠如している状態では、その情熱は長続きせず、やがて「自分のやっていることに何の意味があるのか」という虚無感に包まれてしまうのです。
この限界を打ち破り、他者との繋がりの中に存在意義を見出した素晴らしい事例があります。世界中で宿泊施設の手配を提供するオンラインプラットフォーム、エアビーアンドビーの共同創業者であるブライアン・チェスキー氏の軌跡です。
2007年、サンフランシスコのアパートで家賃の支払いに苦心していたチェスキー氏と共同創業者のジョー・ゲビア氏は、居間にエアベッドを置き、見知らぬ旅行者に朝食を提供して歓待しました。このごく個人的でささやかな経験が、同社の原点となります。彼らは、単なる宿泊場所の提供にとどまらず、見知らぬ者同士が朝食を共にし、街の魅力を語り合うという、人間同士の温かな交流に深い価値を見出しました。
事業が世界規模へと急速に拡大するにつれて、サービスは一時的に「空いている部屋を貸し出すための便利な仕組み」という、物理的かつ合理的な取引へと傾きかけました。そこでチェスキー氏は、自ら世界中のホストの家に滞在し、対話を重ねる決断を下します。その過程で彼は、サービスの根底にある真の価値に改めて気づき始めました。それは、効率的な宿泊施設の提供ではなく、見知らぬ人同士が空間を共有し、互いの文化を深く理解し合い、孤独を癒やすという「他者との深い繋がり」の創出だったのです。
この気づきを得て、同氏は2014年に企業の理念を「どこにでも居場所がある(Belong Anywhere)」というメッセージへと大きく転換させました。この「帰属感」を中心とした理念の刷新により、ホスト(部屋を貸す側)とゲスト(借りる側)の間に、単なる金銭的な取引を超えた強固なコミュニティが形成されるようになりました。ホストたちは、ご自身の部屋を提供し、地元の魅力を伝えることで、世界中の人々に「居場所」を与えるという役割に深い生きがいを見出しました。一方のゲストたちは、見知らぬ土地でまるで家族のように温かく迎え入れられることで、他者との繋がりの尊さを実感したのです。
未曾有の危機的状況により世界中で人々の移動が制限された時期においても、チェスキー氏はこの「人と人との繋がり」という核心を決して手放しませんでした。物理的な移動が叶わなくとも、オンラインを通じて世界中のホストが自らの特技や文化を共有する場を提供し、人間同士が心を通わせる機会を守り抜いたのです。
チェスキー氏が創り上げたシステムは、個人の「利益を得たい」という内発的な欲求を、「他者に居場所を提供する」という社会的な貢献へと見事に昇華させました。IKIGAIは、自分一人の部屋の中でいくら思索に耽っても見つかるものではありません。他者との関わりの中で、自分の存在が誰かの喜びや安心に繋がった瞬間に、初めて手触りを持って生まれ、そして育っていくものなのです。
他者との関係性のなかでIKIGAIを構築する具体的な段階
IKIGAIが「関係の中で育つもの」であるならば、私たちはどのようにしてその関係性を築き、生きがいへと育てていけばよいのでしょうか。ここでは、他者との繋がりを通じてIKIGAIを構築するための具体的な段階を解説します。
第1の段階は、「小さな貢献の場を見つけること」です。最初から社会を変えるような大きな活動を目指す必要はありません。ご自身がこれまでに培ってきた経験や知識、あるいは趣味として楽しんできた技術が、誰かの役に立つかもしれない場面を探すことから始めます。例えば、地域の小さな学習会で知識を共有することや、趣味の活動を通じて初心者をサポートすることなどです。ご自身にとっては当たり前の能力が、他者にとっては極めて価値の高い助けとなることが多々あります。
第2の段階は、「役割を通じた他者との交流」です。小さな貢献を続けるうちに、ご自身を取り巻く環境の中で「役割」が生まれます。人間は、集団の中で自分にしかできない役割を与えられ、それを果たすことで「他者から必要とされている」という強い自己肯定感を得ることができます。この役割を通じた交流のなかで、感謝の言葉を受け取ったり、誰かの成長を目の当たりにしたりすることが、心に深い充足感をもたらします。
第3の段階は、「関係性の深化と生きがいの定着」です。役割を果たし続けることで、単なる支援者と被支援者という関係を超え、互いに支え合う強固なコミュニティが形成されます。このコミュニティへの帰属意識と、そこでの継続的な他者との関わり合いこそが、揺るぎないIKIGAIとしてご自身の人生に定着していくのです。
もちろん、このプロセスが常に順風満帆に進むわけではありません。他者との関わりには、意見の相違や思い通りにいかない経験が付き物です。相手のために良かれと思って行ったことが、期待した結果に結びつかなかった事例も数多く存在します。しかし、そうした葛藤や摩擦を乗り越え、相手との対話を深めていく過程そのものが、関係性をより強固なものにし、IKIGAIの土台を確かなものにしていくのです。
この段階的な関係性の構築を見事に体現し、世界的な変革をもたらしたのが、バングラデシュでグラミン銀行を創設したムハマド・ユヌス氏の事例です。
ムハマド・ユヌス氏は、貧困に苦しむ人々に無担保で少額の資金を融資するマイクロクレジットという仕組みを考案しました。この仕組みの最大の特徴は、融資を受ける際に5人1組の互助グループ(コミュニティ)を作ることを条件とした点にあります。
当初、貧困層の女性たちに個別に資金を提供しても、孤立した状態では事業を継続することが難しく、思い通りにいかない経験が重なりました。しかし、5人1組のグループを形成させることで、状況は劇的に変化しました。彼女たちは定期的に集まり、資金の運用方法について話し合い、互いに励まし合い、事業のノウハウを共有するようになりました。
この互助グループというコミュニティの中で、彼女たちは単なる債務者ではなく、「仲間の成功を助ける」という重要な役割を担うようになりました。1人が困難に直面したときには他の4人が支え、共に問題を解決していく。この強力な他者との連帯と、グループ内での明確な役割が、彼女たちに「自分は1人ではない」「自分にも他者を助ける力がある」という深い自信と生きがいをもたらしたのです。
ムハマド・ユヌス氏のこの実践は、IKIGAIが個人の努力だけで完結するものではなく、他者との強固なネットワークと役割の分担によって急速に育ち、社会全体を豊かにしていくことを証明しています。日常のなかで、ご自身がどのようなコミュニティに属し、そこでどのような役割を果たせるかを考えることが、IKIGAIを育むための重要なアプローチとなります。

個人の目的から社会の意義へ移行する生きがいの物語
IKIGAIを他者との関係性の中で育てるという視点を持つと、人生の目的はより広大で豊かなものへと変化していきます。ご自身の利益や達成感という個人の内側の目的から、遠く離れた見知らぬ他者への貢献という社会的な意義へと移行していく過程には、数多くの対話と、深い心の変化の物語が存在します。
多くの方が、ご自身のキャリアの絶頂期において、「自分の行っていることは、本当に誰かの役に立っているのだろうか」という葛藤を抱えます。これまでの実績は申し分なく、経済的な安定も確保されている。しかし、日々の業務が単なる数字の追求や、自己の保身のための作業に思えてならない瞬間があるのです。
このような悩みは、他者との新しい関係性を構築することで劇的に解消されることがあります。自分自身の枠を超え、他者の痛みに共感し、その解決のために自らの時間や資源を投じる行動は、結果として自分自身の心に最大の充足感をもたらすからです。
この「個から他者へ」の移行による生きがいの変化を、見事な事業モデルとして具現化したのが、トムス(TOMS)の創業者であるブレイク・マイコスキー氏の軌跡です。
ブレイク・マイコスキー氏は、若くして複数の事業を立ち上げ、一定の成功を収めていました。しかし、彼の人生を決定的に変えたのは、アルゼンチンを旅行していた際の出来事でした。彼はそこで、靴を買うことができず、裸足で生活し、足を怪我したり感染症にかかったりする多くの貧しい子どもたちの姿を目の当たりにしました。
この光景に深く心を動かされた彼は、単に寄付をするのではなく、持続的に子どもたちを支援するための全く新しい事業モデルを考案しました。それが、「靴を1足購入するごとに、靴を必要としている世界の子どもたちに1足を贈る(ワン・フォー・ワン)」という画期的な仕組みです。
この仕組みは、顧客にとっても大きな意味を持ちました。顧客はトムスの靴を購入することで、間接的に途上国の子どもを支援するという「他者への貢献」に参加することになります。単なる消費行動が、社会的な意義を持つ行為へと転換されたのです。
ブレイク・マイコスキー氏自身のIKIGAIも、この事業を通じて劇的に変化しました。以前の彼は、事業を成長させ、自己の成功を追求することに価値を見出していました。しかし、トムスの活動を通じて、世界中の子どもたちの笑顔と、支援に参加してくれた顧客からの共感の声を受け取ることで、彼の生きがいは「自分のため」から「関わるすべての人との繋がりと貢献」へと完全に移行しました。
このワン・フォー・ワンのモデルにより、トムスはこれまでに数千万足もの靴を世界中の子どもたちに届けてきました。この膨大な数字は、ブレイク・マイコスキー氏一人の力で成し遂げられたものではありません。彼の想いに共鳴し、靴を購入した数え切れないほどの顧客、そして現地で靴を配布するパートナー団体との強固な関係性のネットワークがもたらした結果です。
この実例は、IKIGAIが「誰かのために行動する」という他者への貢献を通じて、国境や文化を超えた巨大な共鳴の輪を生み出す力を持っていることを示しています。ご自身が現在お持ちの資産や知識を、ごく身近なコミュニティや、あるいはもっと広い世界の課題解決にどのように結びつけることができるか。その対話と実践のプロセスにこそ、これからの人生を照らす新しいIKIGAIの物語が待っています。
生きがいを育む過程で直面する誤解と乗り越え方
IKIGAIを「他者との関係性の中で育むもの」として実践していく過程では、多くの方がいくつかの誤解や壁に直面します。ここでは、つまずきやすい点とその乗り越え方について整理します。
最も陥りやすい誤解の1つは、「他者と関わるからには、最初から完璧な貢献や、誰もが驚くような価値を提供しなければならない」と力んでしまうことです。長年、ビジネスの第一線で「結果」や「効率」を厳しく問われてきた方ほど、コミュニティでの活動や他者への支援に対しても、高い目標設定と完璧な成果を求めてしまいます。しかし、関係性の中で育つIKIGAIに、数値化できる完璧な成果は必要ありません。
期待した結果が得られなかった事例や、思い通りにいかないコミュニケーションが発生した際、「やはり自分には向いていないのだ」と早急に判断して関係を断ってしまうことも、よくあるつまずきです。人間関係は機械の操作とは異なり、時間をかけて少しずつ理解を深め、調整していくプロセスが不可欠です。すぐに関係性の効果を焦るのではなく、相手の言葉に耳を傾け、試行錯誤を共有する時間そのものを楽しむ姿勢が求められます。
また、「自分の役割が明確でないと動けない」という疑問も多く寄せられます。組織の中では明確な役職と権限が与えられますが、地域社会や新しいコミュニティにおいては、最初から肩書きが用意されているわけではありません。ご自身の側から相手の状況を観察し、「私にできることはありますか」と問いかける小さな一歩が、新しい役割を生み出すきっかけとなります。
このような「完璧な目的や形を最初から求めない」という姿勢の重要性を、組織内のコミュニティ形成によって証明したのが、オンラインでの靴の販売企業ザッポス(Zappos)の元最高経営責任者であるトニー・シェイ氏の事例です。
トニー・シェイ氏は、靴を販売するという事業自体に最初から壮大な人生の目的を持っていたわけではありません。彼が最も注力したのは、「顧客に最高のサービスを届けること」と、「社員同士の強固なコミュニティ(企業文化)を育むこと」でした。
彼は、社員が互いに助け合い、楽しく働ける環境を作ることが、結果として顧客への素晴らしい対応に繋がり、企業の成長をもたらすと信じました。コールセンターの対応マニュアルを廃止し、社員1人ひとりが顧客と人間同士の温かい対話を行うことを奨励しました。また、社員同士の繋がりを深めるためのイベントや、互いに感謝を伝え合う仕組みを積極的に導入しました。
トニー・シェイ氏は、最初から完成された完璧な企業理念を押し付けたわけではありません。社員との日々のコミュニケーション、顧客との対話という無数の「関係性の構築」のプロセスの中で、ザッポスという企業全体のIKIGAI(顧客と社員の幸福の追求)が徐々に形作られていったのです。
この他者との関係性を最優先にするアプローチは、圧倒的な顧客の支持と社員の定着率をもたらしました。IKIGAIは、どこか遠くにある理想の形を探し求めるのではなく、今目の前にいる人たちとの関係を丁寧に深め、互いの喜びを共有する日々の営みの中から自然と湧き上がってくるものなのです。
読者の皆様も、ご自身の日常を振り返ってみてください。すでに皆様の周りには、家族、友人、同僚、あるいは地域の人々といった、数多くの関係性が存在しています。その関係性の中に、まだ気づいていないご自身の新しい役割や、IKIGAIの種が隠されているのではないでしょうか。
他者との繋がりが紡ぐ、これからのIKIGAIの形
本記事を通じて、IKIGAIが個人の内側だけで完結するものではなく、他者との関係性の中で育まれるものであることについて深く考察してまいりました。ここで、今回の重要な視点を3つに集約し、それぞれの言葉に込められた深い意味を添えて振り返ります。
第一に、IKIGAIは自分1人の内面を探求して見つけ出すものではなく、他者やコミュニティとの関わり合いの中で時間をかけて「育つもの」であるということです。これは、あらかじめ用意された完璧な答えを自らの内に探すのではなく、日々の温かな交わりのなかで種が芽吹き、少しずつ形を成していくという自然な生命の営みを意味しています。
第二に、小さな貢献や役割を通じて「他者から必要とされる感覚」を得ることが、深い自己肯定感と生きがいの土台となる点です。他者との社会的な繋がりを持ち、誰かのために自らの力を活かしているという確かな実感は、孤立という深刻な危機を防ぎ、人間の精神的な良好さを劇的に高める強力な源泉となります。
第三に、最初から完璧な目的や成果を求めるのではなく、相手との対話や思い通りにいかない経験を含む試行錯誤の過程そのものを楽しむ姿勢が、関係性を強固にするという視点です。すぐに結果を求めるのではなく、他者と向き合い、ともに歩むプロセス自体に尊い価値を見出すことで、揺るぎない充足感がもたらされるのです。
これらの視点を日常に落とし込むための、今すぐにできる小さな行動の具体案を1つご提案いたします。
明日、ご自身の長年の経験や専門知識を全く必要としない場面において、いかなる評価も求めず、ただ純粋な関心を持って、身近なコミュニティ(地域の集まり、趣味のサークル、あるいはオンラインの交流の場など)に参加するための情報を1件だけ検索してみてください。そして可能であれば、そのコミュニティの活動内容について、ご自身の心がどのように動いたかを書き留めてみてください。この極めて小さな、他者へ向けた一歩が、皆様の新たな関係性の扉を開く強力な起点となります。
オーストリアの詩人であるフーゴ・フォン・ホーフマンスタール氏は、次のような言葉を残しています。
「私たちが本当に所有しているのは、私たちが他人に与えたものだけである。」
ご自身がこれまでに培ってきた豊かな知識、経験、そして愛情を、これからの時間をかけて誰と分かち合い、どのように社会に還元していくのか。その問いと向き合うプロセスそのものが、皆様の人生をさらに美しく彩る究極のIKIGAIとなるはずです。
What will you leave on this planet?(あなたはこの地球に何を残しますか?)
この問いの答えは、決してご自身の内側だけにあるのではありません。これから出会う人々、共に笑い合い、時に支え合う他者との関係性のなかにこそ、その確かな答えが待っています。皆様のこれからの道のりが、豊かな繋がりと喜びに満ちたものとなることを心より願っております。

【執筆・監修:ウィングストン調査研究部】
当財団では、世界中の人々が1度きりの人生を大切な人とともに歩み、自分らしく輝き続けられる社会の実現を目指しております。
その一環として、日本発の概念である「いきがい(IKIGAI)」に注目し、多角的な研究を行っています。
「海外から見たIKIGAIの受容」や「生涯現役で活躍する高齢女性のライフスタイル分析」など、共有可能な知見を多数蓄積しております。フォーラムへの登壇、カンファレンスでの発表、メディア掲載のご依頼につきましては、下記担当までお気軽にお問い合わせください。
一般財団法人ウィングストン・ジャパン財団
担当:田中
【引用元・参考情報】
- ソニー生命保険株式会社(生きがい実態調査)
- 内閣府(満足度・生活の質に関する調査報告書 2025 ~我が国の Well-being の動向~ 令和7年9月)
- 認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ(こども食堂の実態・困りごと調査 2025 報告書)
- Airbnb, Inc.(Belong Anywhere / About Us)
- Grameen Bank(Microcredit and Solidarity Groups / Introduction)
- TOMS Shoes, LLC(One for One Model / Impact)
- Zappos.com, Inc.(Delivering Happiness and Company Culture / About Zappos)
- Poetry Foundation(John Donne: Meditation XVII)
- Oxford Reference(Hugo von Hofmannsthal: Selected Writings)
- Airbnb Newsroom(Airbnbの歴史)
- Airbnb Newsroom(オンライン体験の提供開始)
- 世界保健機関(「孤独と孤立」に関する宣言と新たな国際委員会の設立)