ニューヨーク在住のクレアです。
ひとりの人間として、ひとりの動物愛好家として、これから複数回にわたり動物たちを取り巻く現状をお伝えしていきます。
私は、幼少期から、動物園に1人で丸2日間入り浸るほどの動物好きです。
実家はマンションで、家で犬を飼うことは許されませんでしたが、友達の犬の散歩に一緒に行ったり、犬が猫の飼い主だけが集まるようなイベントに行っては情報収集して、小学生の時の誕生日プレゼントは犬種図鑑。
家の周りで見かけた犬種はメモを取って記録していました。
また補助犬と呼ばれる、身体障害をお持ちの方の生活を支える盲導犬、聴導犬、介助犬の訓練センターやイベントには足しげく通い、「補助犬同伴可」シールを近所のコンビニに配って回るなど、ペットとしてだけではない、動物と人との関わり方にも触れてきました。
小学生の頃、初めて家に迎えたハムスターのことは今でも鮮明に思い出せます。
本当にかけがえのない存在です。
いつしか母となったこのハムスターは、5匹の子供を産みました。
しかし、悲しいことに、生まれてすぐに、1匹の子供が体の大きい他の兄弟たちの下敷きになり、命を落としてしまいました。
母親のハムスターはすぐにそれに気づき、翌日より地面が頑丈な場所へ寝床を移していました。
彼女は子供たち全員を新しい寝床に運びました。
すでに亡くなってしまった子も。人も取り残さずに。
ハムスターと言う、人間から見ると本当に小さな生き物ですが、そんな母ハムスターの姿から、私は小学生ながら「命の大切さ」「母の強さ」を学びました。
今回このコラムの掲載をしていただいている、一般財団法人ウィングストン・ジャパン財団は”未来を育み、かけがえのない命を守る”ことを目的とした財団です。
かけがえのない家族(ハムスター)が教えてくれた尊い命を守るべく、そして、動物と人との幸せな共生社会の実現に向け、私自身も、この財団の思いに共感し、動物を守る立場として、いかにして動物達と向き合っていったら良いのかお伝えできたらと思っています。
感動的な瞬間をみせてくれた母ハムスターとその子ども達
目次
1. 犬と人の歴史的関係
2. 猫と人の歴史的関係
3. 現代における人と犬猫の関係
4. 犬や猫と本当の意味で共に生きるとは?
5. おわりに:選ばれたからこそ、私たちにも責任がある
1. 犬と人の歴史的関係
まず最初に、そもそも地球上には沢山の種類の動物が存在しているにも関わらず、なぜ犬や猫ばかり、こんなにも沢山「ペット」として人間と共に暮らすようになったのか。
その歴史を振り返ってみましょう。
動物学の世界では、野生動物を人が飼い馴らし、遺伝的に変化させたものを「家畜」と呼びます。家畜と聞くと、牛や豚を真っ先に思い浮かべる方が多いのではないかと思いますが、実は最も古くに「家畜化」されたのが犬だったと言われています。
そうです。犬も、動物学的には「家畜」なのです。
年代ははっきりとはわかっていないものの、約1万5000年以上前、オオカミが人のそばに寄り添い共生を始めたといわれています。
DNAを調べることができるようになってきたことで、1993年、犬の祖先が古代に絶滅したオオカミであることがはっきりとわかりました。
他の「家畜」である牛や豚は、人が農耕牧畜を始めた約10,000年前から家畜化されて、人の側にいたと考えられていますが、犬だけは、更に昔、人類が狩猟採集生活を送っていた時代から人のそばにおり、狩猟の相棒としてだけではなく、番犬をしたり、荷物を運んだり、移動用に犬ぞりを引き、さらには食料が少ないときには人に食べられることもありました。
犬ほど、人の役に立ってきた動物はいないでしょう。
牛や豚は逃げ出さないようにと、囲いに入れられ、家畜化された一方、犬は進んで人との暮らしを受け入れ、人と暮らすのに適した体質に自らを変化させていったことで、 囲いに入れられるどころか、狩猟のパートナーとなり、更に家族の一員へと変化していったのです。
しかしここで一つの疑問が生まれます。
なぜ、肉食の狼が人間を襲うことなく、人のそばにいることができたのでしょうか?
これには諸説あり明確には解明されていません。一説では、人が残した食べ物を狙って一緒に過ごすようになったと言われています。
現代の私たちが何気なく、「ペット」として迎えている犬達が、実は狩猟採集時代からのパートナーだったと考えると、奥深いですよね。
人間の進化そのものが、犬無しでは実現しなかったかもしれません。
盲導犬訓練センターで体験会に参加した時の様子
2. 猫と人の歴史的関係
では猫はどうでしょうか?
実は猫も犬も、約5000万年前の祖先は同じ動物だったと言われていますが、そこから幾度となく進化を繰り返し、今でもアフリカやアジアに暮らす「リビアヤマネコ」が現在私たちがペットとして迎える猫の祖先だと言われています。
初めは、森の中で暮らしていましたが、やがて砂漠で暮らすようになったリビアヤマネコ。
人が農耕を始めた頃、大切な農作物を守る存在、害獣駆除(特にねずみ取り)の役割として、一緒に生活をするようになりました。
人間にとっても猫は害獣のねずみを食べてくれるありがたい存在で、猫にとっても人の周りには食べ物がたくさんあり、可愛がってくれる、人のそばは居心地がいい、と思ったのでしょう。
徐々に人との生活を好むようになった猫たちは人懐こい性質を持つ子孫を増やしていきました。
最近までは、猫と人との暮らしが始まったのは3500年ほど前の古代エジプトからだと信じられてきました。
しかし2004年に、新たに9500年前頃の猫の骨が発見されたことにより、約10,000年前の人類が農耕を始めた頃から、猫が人と共にいたことがわかったのです。
小型犬と大型犬の差が激しく、種類豊富な犬を比べると、猫が品種によってそこまで大きさや見た目の違いがないのは、ねずみ取り以外に役に立つところがなかったからと言われています。
しかし、一方で猫は歴史上、各地域、各時代の文化と密接に関わってきました。
古代エジプトでは神の化身として、死後はミイラにされ飼い主は眉を剃って喪に伏せました。
中世ヨーロッパでは、魔女の使いと見なされ、特に黒猫は悪魔の化身として迫害を受けました。
1347年頃、ペストが流行すると、魔女の仕業とされ、猫に対する迫害は更に進行しました。
日本でも、特に平安時代頃から上流階級のペットとして可愛がられ貴族のように豊かな生活を送った猫もいれば、一方鎌倉〜江戸時代には尻尾の長い猫は「猫又」として妖怪に準えられて嫌がられ、尻尾を切られるなど、猫は本当に、「人間の勝手な思い込み」に振り回されてきた動物と言えるでしょう。
それでも人の側にいて、私たちを癒してくれる存在として居続けてくれている彼らに、頭が上がりません。
3. 現代における人と犬猫の関係
さて、犬と猫それぞれの歴史的な人との関係についてわかったところで、現代の私たちの関係性に目を向けていきましょう。
一般社団法人ペットフード協会の「令和2年 全国犬猫飼育実態調査」によると、2020年に新しく飼い主となった人は、前年度比で犬が14%増(46万2,000頭)、猫16%増(48万3,000頭)増加し、2024年調査によると、現在日本では約1,591万頭の犬猫がペットとして人と共に暮らしています。
コロナで孤独感を感じたり、不安感が増えた中、ペットを迎えることで「元気をもらえた」、「毎日が明るくなった」、「家族のコミュニケーションが増えた」というポジティブな意見も多く、今後も更にペット人気には拍車がかかることが予想されています。
しかし、そんな幸せ報告も沢山上がっている一方で「飼育放棄」の問題は深刻化しています。欧米などの一部地域ではペットショップでの生体販売を禁止していますが、日本で犬猫を迎える人の多くはペットショップで購入を選んでいます。
一概にそれが悪いというつもりはありません。
しかし、保護団体から引き取る場合に比べて、ペットショップでは事前のマッチング調査がされなかったり、セールストークで誤った情報を聞いていたり、お金さえ払えば簡単にペットを迎えることができてしまう側面があります。
その為か、一時的な孤独感を紛らわせたくてペットを迎えたけれど、飼ってみたら「夜泣きがひどくて耐えられない」「なかなかトイレを覚えない」「思ったよりお金がかかる」など様々な理由で、6人に1人が「飼ったことを後悔している」とのアンケート結果も。
後悔した結果、今なお、「路上への放置」という方法を選択する人もいます。
保護施設は深刻な財政難、スペース確保に苦しんでおり、環境省からの発表によると、今なお一年間で1万匹以上の犬や猫が殺処分されています。更には、保護施設を運営していた方でさえも、財政難の苦しみから自ら命を絶ってしまうという悲しい事件まで発生しています。
4. 犬や猫と本当の意味で共に生きるとは?
ある調査では、95%の飼い主が「ペットは家族」と回答したといいます。
もちろん家族同然に可愛がることはとても微笑ましく、素敵なことだと思いますが、彼らは家族であっても人間ではありません。
動物にはその動物の特徴があり、人間とは違うのです。
それを認識せずに人間同様に扱ってしまうことに問題があります。
きちんとしつけをしていますか?
甘噛みを許していませんか?
お菓子の適切な量を知っていますか?
「家族ではあるが人間ではない、彼は犬である、が、家族」という認識を全員が持つべきである、と私は考えています。
5. おわりに:選ばれたからこそ、私たちにも責任がある
今回は、犬と猫との共生生活の始まりについて言及しました。
これからも共に、幸せに生きていく為に
犬や猫を迎えて後悔する家庭がでないように
保護された子達がずっと幸せでいられるように
セールストークではなく、正しい知識を1人でも多くの人に知ってもらうことが大切であると考えています。
例えば、流行りの犬種が「かわいいから」「おしゃれだから」という理由だけで購入することも、病気になりやすい「奇形種」を増やしてしまう原因を作っています。
1万年以上前から私たちと共に生き、生活を支えてきてくれた犬や猫。
歴史的に人から虐待を受けながらも、それでも私たちと共にいてくれる彼らですが、人間である私たちとの暮らしが彼らにとって良くないとなれば、未来世代はどうなるでしょうか。
これからも動物に対する正しい知識を広めることで、ペットと相思相愛な家庭が増え、人間良がりではなく、お互いにとって幸せな世界が広がっていったらいいなと思っています。
次回以降、今回お伝えしきれなかった海外との比較や、保護活動の実態、働く犬達なども取り上げていきますので、楽しみにしていてくださいね!